scene2.大瀬仁菜子

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scene2.大瀬仁菜子

私と涼ちゃん、そして圭ちゃんは幼なじみだ。物心付いた時にはいつも涼ちゃんが傍に居て、年の離れた圭ちゃんは自然と私たちのお守り役のようになっていた。私はそんな優しいお兄ちゃんの圭ちゃんが本当に大好きで、いつかはお嫁さんになるんだと小さな頃からずっと思っていた。 小学校の中学年になるまでは、本気で圭ちゃんのお嫁さんになれると思っていた事は否定しない。恥ずかしいけれど。けれども、それからもずっと「お嫁さんになる!」と言ってはいたけれど、それが無理な事くらい、いくら「脳味噌がプリンの仁菜子」と涼ちゃんに言われても解っていた事だ。 でも、言ってさえいればいつかは本当の事になるかもしれないし、私も心が折れなくて済んだ。 「仁菜子ー。いつまで寝てるの?早くしないと学校遅刻しちゃうわよ」 「はーい」 階下からお母さんの声が聞こえて来る。口調から少しだけ苛々しているのが伝わって来た。昨日は結局あのまま涼ちゃんの部屋のベッドでふて寝してしまい、起きた時には涼ちゃんは椅子の上で腕を組んで寝ていた。急いで時計を確認すると12時を回る所だったのだ。 本当に涼ちゃんには申し訳ない事をした。いくら自分が落ち込んでいて一人で居たくないといっても、彼には部活がある。毎日6時を少し過ぎた時間に家を出て行くのを私は知っている。 「涼ちゃん、大丈夫かな?」 むくりと体をベッドの上に起こすと、寝癖だらけの髪の毛を手で触る。もう、この寝癖なんとかして欲しいな……。このまま学校に行きたいくらいに、身だしなみを整えるのが今日は面倒だ。と、……そんな事を思っても、いくらなんでもこの頭で学校に行く訳にはいかないけれども……。 私はゆっくりベッドから降りると、支度をする為に自分の部屋を出た。
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