scene4.瀬野川奏

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scene5.小坂涼 朝から嫌な人に会ってしまった。兄の彼女、瀬野川奏。彼女は僕の通う北川高校の現代国語の教師だ。おバカな仁菜子はまだ気付いていないだろう。実は仁菜子のクラスの副担が大好きな兄の彼女だった……なんて事を知ってしまった時にはどれだけヘコむのだろうか……。それを考えるだけで頭が痛い。そう、色んな意味でだ。 「嫌な人」といっても僕は別に瀬野川先生の事が人として嫌いな訳ではない。どちらかというと温厚で頭も良さそうで優しくて、人の気持ちに良く気付く、兄にはもったいないくらいの彼女だと思う。 でも、そこに僕の感情と仁菜子の感情が絡んで来ると瀬野川先生へと対する想いは大きく変わってしまうのだ。仁菜子は兄の事が大好きだ。今まで兄に彼女が居るはずない……なんて考えるのは兄の歳の事を思うと難しいだろう。仁菜子もそれくらいはわかっている筈だ。けれど、思うだけと、実際に知るのとでは意味が違う。しかも、その彼女が良く出来た女性の代表のような瀬野川先生だなんて知った日には立ち直れるのだろうか?無理なんじゃないかとなんとなくだけれど思う。 仁菜子はバカに見えるけれど、実は結構色んな事をちゃんと考えているし、洞察力だって鋭い。だから嫌なんだ。仁菜子が必要以上に色んな事を心の中に抱えてしまうだろう……と予測出来るのが。今以上に無理をしながらも「圭ちゃん大好き」「幸せになってね」なんて無理して笑う姿が見える気がするのが。いつもは我が儘ばかり言っている仁菜子だけれど、そういった事では絶対に自分の感情を兄に気付かせまいとするだろう。 僕だって小さな頃から仁菜子の事をずっと見て来て、ずっと一緒に居るからわかる。いつも彼女のやらかした事の尻拭いをするのも僕だし。でも、本当は仁菜子がとても可愛い女の子だって事も知っているんだ。それは絶対に本人に言うつもりなんてないし、これからも気付かれないように生活していくのが普通だと思う。 けれど、そんな事解っていても、仁菜子が目の前で泣いていたりすると、凄い辛くなる。そんなに辛いのなら、僕の方を見ればいいじゃんっなんて言っても仕方の無い事を思ってしまうのだ。 あー。本当に僕の恋は報われない……。
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