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その学校に入学することになったのは、単に俺自身の学力の問題と家から近いというだけの理由であり、特別にこれといった理由はなかった。
わざわざ必死で勉強して頭の良い学校に入ろうなどという気はこれっぽちもなかったし、すんなりと入学できればどこでも良かった。
強いて理由をあげるなら校則がゆるいことと、幼馴染みがそこに入学すると言っていたから、それくらいだ。
ついでに言うと校舎はやけに綺麗だし、女子の制服が他の学校に比べて可愛いので、文句の付け所がない。
それくらい軽い気持ちで受験をして、入学式を終えた今日、中庭では激しい部活の勧誘が行われていた。
どんな学校なのかあまり気にしていなかったが、どうやらマンモス校らしく部活の種類がとんでなく多い。
定番のバレー部やバスケ部、野球部はもちろん、オカルト部や軽音部、生物研究部などさまざなジャンルの部活がある。
それぞれの部活がユニフォームを着たり、コスプレをしたりして、新入生を1人でも多く入部させようと躍起になっていた。
何もわざわざ先輩から直接勧誘を受けなくても、新校舎の一階の廊下の掲示板にすべての部活のポスターが張り出されていたはずだ。
こんなお祭り騒ぎみたいな人混みではまともな話も聞けないだろう。
俺はそのポスターを見に行こうと中庭を抜けて校舎に入った。入りたい部活などなかったが、これだけ種類が多ければ面白い部活があるかもしれない。
あれば入ってもいいし、無ければ帰宅部でも問題ない。できればあまり力の入っていない、休んでも文句を言われないような部活が良い。
そう思いながら廊下を歩いていると、大きな掲示板に何枚ものポスターが張り出されているのが見えてきた。
周りに生徒はほとんどいなかった。だいたいの新入生が中庭で勧誘を受けているようだ。そのうえ今日は入学式なので、上級生は部活の勧誘者と生徒会くらいしか登校していないらしい。
ずいぶんと大きな校舎なだけあり、人がいないとやけに寂しく感じた。
貼り出されているポスターを一枚につき一秒もかからない速さで目を通していくと、一番最後のポスターに目が止まった。
『世界の平和を守る部』
いやいや、いくら種類が多いとはいえこれはふざけすぎだろう。
生徒の人数が多いとこんな変な部活をつくる者まで出てくるのか。
『活動内容:世界の平和を守る』
活動内容が部活の名前と全く同じで、何をしているのか全くわからないし、せめてもう少しひねりのある名前にしたほうが良いと思う。
『場所:旧校舎の三階』
旧校舎の三階から平和を守られてる世界って何だろうな。
世界平和とか世界を守るとか、そういうのはまったく理解できないが、こんなふざけたことを堂々とやっているのだとしたら、見てみたいという気持ちはある。
冷やかし程度に見に行ってみようか。
中庭を見た限りではそんな部活の勧誘は無かったし、何よりほかの部活はポスターを可愛くデザインしたり、インパクトのあるスローガンを使っているのに、この部は必要最低限のことしか書かれていなかった。
勧誘する気があるとは到底思えない。
それに旧校舎は普段の授業では使用しないらしいので、一度行ってみるには良い機会だろう。
俺はこの学校に入学したときと同じくらい、いやそれよりももっと軽い気持ちで俺は旧校舎に向かった。
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