それはいつものようにここにあった

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「あの…。開いてますか??」 お店の中に入ると私は小さな声で辺りを見回しながら誰に問うでもなく声を出した。小さなお店もディスプレイにはカップだとかぬいぐるみだとかの女の子なら大体好きであろう…という雑貨が綺麗に陳列してある。色々と商品を見て、「どれを買おうか…」なんて吟味している時だった。 「おや、お客さんかい??めずらしいね…」 小さなお店の奥からお婆さんだろうか??このお店の人の声が聞こえた。暗闇の中に目を凝らしていると、その闇の中から小さな可愛らしいお婆さんが現れた。歳は90歳は越えているのではないか??と思われるほどの白髪のお婆さんで、その白い髪の毛を綺麗に編みこんで纏めている。そしてこの洋風の建物に似つかわしくないであろう綺麗な着物を着ていた。 「あ…。あの、勝手に入ってすみません」 「いや、いいんだよ。お店は開いてるからね」 「は…い…」 「何か気に入ったものはあったかい??」 「あの…」 私はそう応えて、もう一度周りをぐるりと見た。その時だった。私の目にあるものが飛び込んで来たのだ。 「コレ…。ストラップ??かなぁ…??」 私が手を差し伸べたものは古くてアンティークな香りのする鍵だった。とても不思議な形をしていて、鍵の持ち手部分に青色に光るハート型の石が付いている。私はその鍵を思わず手に取った。するとお婆さんが言った。 「その鍵が気に入ったのかい??」 「あ…。とても綺麗だなぁ…と思って…」 「じゃあ、その鍵はお嬢ちゃんを選んだんだねぇ。持ってお行き」 「え??お代金は??」 「いいよ。特別サービスさ」 お婆さんはそう言いながら私にその鍵を握らせてくれる。お婆さんの手は温かくて少しだけ花の匂いがした。だけれどただで貰う訳にはいかない。今日は街で買い物をする予定だった為、持ち金は少しだけある。 「ありがとうございます。だけれどお代金を払わない訳にはいきません」 「いいから。このお店はどうせ今日で閉める予定だったからね。お譲ちゃんが最後のお客様だよ。特別サービスだよ」 お婆さんは「ふふ」と優しく笑うと、「これもおまけだよ」と言って鍵に付いていた宝石と同じ色の石がついた髪留めをくれた。私がその髪留めを触るとふわりと石が輝いて温かい光を放った気がした。
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