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【ケンタウロスの森】 森へ
“ケンタウロス族には、例え違う姿形であっても同族だと分かるたったひとつの言葉があるんだよ”
(異世界から来た、しかも人間の僕がケンタウロスの皆さんに受け入れられるのかな……)
この世界の住人ではなかった僕が不安に駆られて泣き言を言うと、アレクさんは事もなげにそう言って笑った。
え、何、そんな言葉があるなら早く言ってよ。心配して損しちゃった。
で?なあに?
「そのうち分かるよ」
ええー!今!今教えて!余計に気になるよ!
あ、皆さんこんにちは、友樹です。
もうすぐ皆既月食で、僕とアレクさんにも発情期が来るってお話を前回したけど、
来るんです。
明日から5日間。
うわー、ドッキドキ。アレクさんと最後までエッチ出来る。ひゃー照れる~。僕上手に出来るかな。
その森に入る手前にはケンタウロスの皆さんがお住まいの場所があるらしくて、アレクさんが僕を紹介してくれるって。
だから番になったのが異世界人の僕で、反対されてないかと心配してるとこ。
俺達ケンタウロスの森をこの世界の者じゃない奴が汚すな、とか言われないかな。
それに、僕の体にはアレクさんには出た番のタトゥーが出てないんだ。身体中を探したけど見つからなかった。
アレクさんは番は僕だって断言してるし、一族は絶対大歓迎するよって言ってくれてるけど不安だよ。
ところで、アレクさんから聞いた話だと、コッチの発情期は向こうの世界の期間中ずっとエッチしてる発情期とはちょっと違うみたいだ。月の重なり具合と連動するらしく、ピッタリ重なる3日目の皆既月食がピークで、ヒートの波もそれに合わせて山になってるらしい。だからヒートの前は森で遊んだり話をしたりするんだって。
とても素敵な場所なんだよって聞いたからハネムーン気分でワクワクしてる!
頭のてっぺんとお尻の上の尾てい骨がモゾモゾし、体の変化を感じ始めたころに僅かに月が重なり始めた。
いよいよ月食の期間が始まる。
発情期が始まる!
「トモくん、背中に乗って。さあ森へ行こう」
アレクさんは薄手の毛布の他にナイフや紐などの簡単な荷物を胴体に括りつけ、僕を乗せて森へと向かった。
少ない荷物だけど大丈夫。森はケンタウロスの聖地だから他の獣人は誰も入れず、危険な生き物もいないらしい。飲み水も食べ物も現地で調達出来て、足りなければ森の近くの仲間たちから分けて貰えるから殆ど何も要らないんだって。
アレクさんの馬の胴体を乗馬するように跨ぎ、人間の背中に後ろから手を回してしっかりと掴まる。しっかりと筋肉のついた逞しい背中。ドキドキしながらギュッと抱きつき、こっそりとほっぺたをあてた。
足取りは軽いギャロップ。
道中、進みながら見た事のない異世界の風景をあちこち紹介してくれる。石垣の壁や風車や跳ね橋なんて外国の写真でしか見たことなかった。まんまファンタジーの世界だよ。写メ取りたい!Twitterに上げて皆んなに見せたい!
肩越しに説明を聞き興奮してたら至近距離でアレクさんが微笑んでいた。照れて笑い返したらチュッと唇を軽く喰まれた。わわ、ここ外だよ!誰も見てませんように。
街を抜け橋を渡り林も丘も越え、やっと森の近くまで来た。
そして今ここ、ケンタウロスさん達の群れに着きました。
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