全力鬼ごっこ

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「ほうほうほう!モノケロス、ですか」 もうニッコニコの律さん。やめて。俺知らないよっ!?絶対フラグとか立ててないし! 涙目で律を見ながら首を振る俺。 「さすがに知らないよな…。やっぱ忘れろ」 「知ってますよ〜。Mad Hatterという不良グループの副総長ですよね」 「!」 学園の中でも、箱入り坊ちゃんというイメージの強い親衛隊である律が知っていることに驚く桐生くん。 「知っているのか!?…そのモノケロスが、この学園に通っているはずなんだが見つけきれないんだ。たぶん俺と同じ1年のはず」 同じクラスですよ。 え、え、え〜。なんでそこまで特定されてんの?桐生くんとは学園以外で会ったことないよね? 「ふーん。どうしてそこまで知ってるんですか。その情報はどこから?」 「本人からだ」 知らん! 律にチラ見されたけど、本当に知らないよ!? 「…失礼ですが、そのモノケロスとの関係は?」 「かっ…関係とかは…別に…。一度話したぐらいで…」 やめて。頬染めないで。イケメンが頬を染めてもイケメンなだけだから。 「一度しか話したことのない相手に、あのモノケロスがプライバシーを話したんですか」 「…」 そこでポツポツと初めて会った時の話とやらを桐生くんが説明してくれた。 この学園に編入する前まで遡る。 ちょうど秘密倶楽部を結成した直後かな。 Mad Hatterを勝手に名乗り始めた輩でヤバいヤツだけ潰し回っていた時期があったけどその時に出会ったらしい。 どうやら当時の俺は、無関係の桐生くんをボコっちゃったとのこと。 (おい。まさかアレじゃないか) (アレ?) (ほら。立ち回りしていた時に、小さくて見えなかったからって一緒にボコってしまった不良でもなんでもない一般人がいたって報告してただろ) あー。アレか。奇襲をかけた場所もタイミングも悪くて、学ラン着た中1ぐらいのちびっ子も巻き込んで潰しちゃったやつ。 「目で追えない速さで次々と自分より大きい男達をのしていく姿に見惚れていたら、一緒にボコられて…。倒れた俺に気付いたモノケロスは、目が合うと『間違えちゃった☆』と言って無邪気な顔で笑っていた」 何か微笑ましいものを思い出している顔をしているけど…。それそんなにいい話か?俺がクズすぎた話にしか聞こえないんだけど。 「気を失う前に『また会えるか』と聞いたら、『今から全寮制の男子校に受かるための受験勉強しなきゃだからもう来ない』『受験終わったらまた来るかも』と言っていた。また来る可能性があるということは、そこまで離れた場所ではない。つまり全寮制男子校は桜導か緋扇堂に絞られる。それともう一つ、遠くなる意識のなか『ネクタイ結ぶ練習もしなきゃ』と言っていた気がする。つまりブレザーであるこの学園、なおかつ受験ということは当時のモノケロスは同じ歳だったはず!」 桐生くんは探偵かな。それとも執念というべきか。 「なるほどなるほど。ちなみに現在の桐生君を見て彼は気付いてくれますかね?」 「いや。これでも俺は、当時チビで髪も染めてなかった。勉強した分だけという感じで急に身長も伸びて…。未だに夜中はミシミシ痛む」 「黒髪だったんですねぇ。不良でもないのに何故染めたんですか」 たしかにー。今じゃ立派な不良!って見た目じゃーん。 しかもシルバーアッシュに赤目ってww俺というか律のおっかけみたいwww 律の質問に、桐生くんはそっぽ向きながら恥ずかしそうに答えた。 「…再会しても恥ずかしくない男になりたかった。…その、モノケロスはレッドキャップにとても懐いていたというから、俺も同じ色にすれば好感持ってもらえるかと思って」 「俺、別にボスと同じ色だからって人を判断しないけどー」 「あ」 「…あっ」 「え?」 「「「………」」」 さ、後は律に任せて鬼ごっこに戻ろうかな。 「待ってくれ!!!!」 「や!はな、せ!!」 教室から颯爽と離脱する前に、桐生くんタックルをくらい床に倒れた。 ぐぬっ!ペンペン叩いても押しても離れないいいいいい!!! 「モノケロスなのか!?なぁ!モノケロスなのか!!?」 ノンノン!知りません! 首が飛ぶ勢いでブンブンと首を振っても力を抜いてくれない。 ちょww律wwwパシャパシャ音を立てて写真撮ってる場合じゃないでしょwww助けろし! 「おやおや。こういうのはたまたま耳が遠くなるとか鈍感スキルを発揮してスルーされるものかと思ったいましたが…普通にバレましたねー」 「普通に探しても見つけきれなかったんだ!何一つ見落とさないよう常に気を引き締めていた!」 ファッション不良のくせに力強くない!? あわわ…耳っ!耳に息を当てないで!!くすぐったくて上手く動けぬぅう!
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