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「…………ふう、させと。」
今日は、いまのところ生徒はいないしひとりきりだ。高岸先生が会議にいくまえ
わたしに慌てて預けてきた書類をホッチキスでまとめて行く。
誰もいない保健室には消毒液が鼻をつくようなかおりがわたしを包み込み、保健室のカーテンがゆれる。
「…居心地いいな」
もっともっとここにいたい。
「あともう少し」
作業も、終盤。
だんだん春の空も暗くなってきて紫いろ。
もうすぐ最終下校時刻の18時半ー。ふつうなら部活生だけが残っているはずだけど
わたしは、先生を待つ。
「寺澤」
わたしたちは誰にも言えない秘密がある。
「高岸先生遅かったですね。」
「わるい会議が長引いて。
書類できたのか」
「はい。」
わたしが高岸先生に出来上がった書類を手渡すと
高岸先生はメガネ越しに書類を見つめると同時にネクタイをすこし緩めた。
まったく、目の前に年頃の女子高生がいるのに自覚してない男だからー。こまる
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