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僕はチェーンに油を注してチューブに空気を入れて、家の近くの川沿いにあるサイクリングコースをゆっくりと走り出した。
ペダルは踏むのではなく回してやる。そうすると風の流れと時間がチューニングされて忘れていた心の声が聴こえてくる。
引く力と押す力で地球を転がしてやる感じ。
すると壊れていた時計の針が動き出すんだ。
青空が僕の頭の上で広がり、満開の桜がサイクリングコースを埋め尽くす。
なんて気持ちいいんだ。窓のカーテンを閉め切って、真っ暗な部屋で毛布を被って落ち込んでいたのが嘘のようである。
そして微笑んで暫く走っていると桜の花びらが風に舞い、花見客の中に見覚えのある女性を発見した。
別れた彼女?
しかも、子供と夫がいる。一週間前にフラれたばかりだというのに、彼女は結婚して家族と一緒だった。
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