過去への追走

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過去への追走

それに見とれてコースを外れて川に落ちそうになったが、慌ててハンドルを切って回避した。 気づかれてないことを祈って、息がつまる思いでそこから逃げ出そうとした。 サドルから尻を浮かしてダンシングしてスピードを上げる。 そしてそのパニックのせいか、高校生の彼女に告白して付き合い始めた頃を思い出した。 図書館で本を読んでいた彼女に栞に「好きです」と書いて渡したこと。 剣道部の試合に応援しに来てくれて、僕が決勝戦で負けて彼女が一番悔しそうに泣いていたこと。 東京へ行って大学に進学したら、深夜のラジオパーソナリティを目指すんだと明確な夢を語る彼女に触発されたこと。 でも僕は、一年浪人して大学へ入ったもののプラプラと遊んでばかりいて彼女に捨てられた。そんな野良犬のような気分で暗い部屋に独りでひきこもっていたのである。
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