一章

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「・・・あ、憐くん、」 振り返ると、今会いたくない人ナンバーワンの彼が後ろに佇んでいた。 「ど、どうしたの?、部活は?」 「うん、これから!さとちゃん大丈夫?5時間目も6時間目も欠席してたでしょう?何かあったの?風邪でも引いた?」 ああ、優しい彼にまた要らぬ心配をかけてしまった。 「いや、うん、、ちょっと、気分が悪くて休んでただけだよ、」 そんな彼に嘘をつくことに罪悪感で胸が痛む。胸のあたりをギュッと押さえた。 「そうなの?もう大丈夫?よかったら寮まで送ってこーか、「だ、大丈夫だよ!!もう、、良くなったから!」 予想外の言葉に驚く。慌ててそう言葉を返す。 「さとちゃん昔から体弱いから心配だよ。またいつかみたいに俺の知らない所で倒れでもしたら、」 昔から貧弱な僕はインフルエンザやら腸炎やらと普通の風邪だけでなく流行り病までも引き起こす。その度に僕の異変にいち早く気付いてくれたのは憐くんだった。無理をしてでも学校に行って憐くんに会いたかった僕は結局、その張本人である憐くんに見抜かれ毎回早退させられた。 「いやだ~、、れんくんといる~」 と言ってタダをこねる僕を「大丈夫だよ、きちんと休んで。早く治しておいで?さとちゃんが辛いと俺も辛くなる、だから、早く元気になってまた一緒にあそぼ?」毎回頑として言うことを聞かない僕を優しい言葉で諭してくれていた。きっとそれがあるからこんなに心配してくれているのだろう。不謹慎だか、僕の事を思い心配してくれる憐くんに少しだけ嬉しくなる。 「さとちゃん?」 「あ、いや。大丈夫だよ、僕もう高校生だし1人で帰れるから、」 「そう、、」 多少、納得のいっていない表情だがそれでも首を縦に振ってくれる。 「・・・あれ、、さとちゃん、今日香水でも付けてるの?」 すると今度はスンスンと匂いを嗅ぎ分ける犬のような仕草で顔を近づけ僕のシャツの匂いを嗅いだ。 「え、?香水、?つけてないよ」 僕も自分の服の匂いを嗅いでみるが、いつもと変わらない柔軟剤の匂いがするだけだった。 「・・・そう、、気の所為かな、いつもよりいい匂いがする」 「あ、もしかして鈴弥くんの匂いが移ったのかな?」昼休みの間しか一緒に居なかったけど、結構近い距離だったし彼はいい匂いがした 「鈴弥?って、あの、鈴弥司狼?」 「あ、憐くん知ってるの?」 「知ってるもなにも、あいつも同じサッカー部だもん」 え?鈴弥くんあの見た目でサッカー?意外だ、 「そうなの?」 「でも、なんで鈴弥とさとちゃんが知り合いなの?」 心なしか少しだけ鋭くなる視線に少し戸惑った。 「あ、、いや、たまたまね、この前独りでお昼ご飯食べてる時鈴弥くんがきて、ちょっとだけお喋りしたんだ」 「へぇ、たまたまね。」 少し焦ったようにそういう僕をじーっと見つめ、そう呟く。 「お~い!!高橋~」 憐くんが何かを言おうと口を開くと同時に後ろから憐くんを呼ぶ声が聞こえた。どうやらサッカー部の友人らしい。相手はもう既に部活着を着てシューズを持っている。 「あ~ぁ、じゃあさとちゃん俺もう行かなきゃほんとに独りで大丈夫?」 パッと視線を彼から憐くんに戻すともう既にいつもの笑顔に戻っていてホッとした。 「大丈夫!!」 僕も笑顔でそう答えると、じゃあまた明日、と言って頭を数回撫でるとサッカー部の仲間の所へ走っていった。 「ふぅ、、僕も帰ろ。」 その姿を見送り、僕も寮へと帰る。帰宅途中またスンスンと自分の匂いを嗅いでみるが、やはりいつもと変わらない、 「ただいま~」 自分しかいない部屋の中いつも癖で言ってしまう。手洗いうがいをして部屋着に着替えドサッとベットの上に横になる。今日は少し疲れたな~ あんなに泣いたよのは久しぶりだ。いや、そうでもないか。でも、いつもより体もだるいし泣いたせいか目も痛いし、頭がふわふわするほんとに風邪でも引いた?身に覚えのある症状にはぁとため息が漏れる。ほんとにこの貧弱者め。そのまま気づいたら寝てしまっていた。
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