一章

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「・・・に・・・だ・・・よ。」 周りの騒がしさにだるい眠気から引き戻される。うっすらと目を開くと、見知らぬ男子生徒が2人僕のベットの周りを取り囲むようにして立っていた。 「あ、目が覚めたみたい。」 「おはよ~、君、匂いやばいよ」 まだ眠気の残る頭では、彼らが言っている言葉を理解できない。匂いとはなんだ。 「なんでオメガが普通の保健室に居んの?オメガ用の施錠付きの保健室があんのに、」 「それともわざと?」 グイッと手を引っ張られて無理やり体を起こされる。流石に僕の目も覚めた。 「・・・え、ぼ、ぼくオメガじゃな、」 僕の顔を見て笑みを浮かべる彼らはよく見ると顔が整っていた。 「いや~、こんな強烈なの出しておいて嘘つくの?それは無理あるわ~」 ベットに乗り上げてくる彼らに、自分がどうゆう状態であるのか察し焦る。それに、彼らがこちらに近づいて来ればくるほど、体がビクビクと反応する。いい匂いがして、呼吸が乱れた。 「あ、はぁ、はぁ、な、なにこれ、」 手で口と鼻を覆うが効果はなく 「う~わ、ほんとやばい、はぁ、あんた発情期でしょ?」 手を掴んでない方の彼がそう言ってパタパタと手を扇いだ。 「・・・あ、なにいって、ぼ、ぼくべーたっ」 シャツのボタンが1つまた1つと開けられていく、やばい状態であると思いながらもなぜだか体がいうことを聞かない。 「いや、ベータじゃないでしょ完全に。俺ら二人ともあんたに当てられてんだからさ」 余裕がなさそうに、僕の上にのっかり、シャツに手をかけている彼……う、嘘だ。だって僕はベータのはず。小学校の時おこなった第1次の結果も中学でやった2次の結果だって、ベータと記されていた。これは何かの間違いだ。そう思うのに、どうしようもなく体が熱く、頭が沸騰しそうなほど混乱している。ついに素肌に触れられる。 「ひやっ・・・あ、ま、まって」 撫でるように触れられ、声がでる。なんだこれ、触られただけで…っ、気持ちがいい!!!! 「はぁはぁ、ほんと勘弁してよ。俺が怒られんじゃん」 とかなんとか言って僕に触れる 「・・・あ、あ、きもちっ、」 触られるだけで気持ちがいい、なんで?!普通なら嫌悪感さえ用いるはずのこの状況もう1人の彼が反対側から唇を寄せた。 「ふぅ・・・っ・・・はぁ」 あぁ、僕の体はどうしてしまったんだろう。熱に浮かされた頭で自分の身に起きていることをどこか他人事のように感じていた。 「はい、そこまで。」 そこで、この状況に似つかわしくない、冷静な声。 「はぁ、はぁ・・・す、やくん、」 ゆっくりと視線を横にずらすとベットの仕切りに手をかけてこちらを見つめる鈴弥くんと目が合った。するといつものポーカーフェイスから一転、驚いたように目を見開くとすごい速さで近づいてくる。 「は?谷くん??何しての君・・・てか、この匂い、、まさか、キミが?発情期、?」 昨日話した時より声のトーンが高く焦っているように見えるその様子。 「はぁ、邪魔すんなよ、、鈴弥、こいつの匂いきちーんだよ、」 「とりあえず、彼の上から退いて、」 そのまま僕に跨る男子生徒をどかすと、ごめんと言って僕の太腿に何かを刺す。それは注射器のようなもので少しチクッとした。 「即効性の抑制剤打ったから、とりあえずお前らもアルファ用のやつ飲んで、先生よ・・・」 刺されてすぐ眠気が襲う。鈴弥くんがいろいろと話しているが、僕の耳にはとどかない。 でも、今無性に憐くんの声が聞きたくなるのは、僕が不安な時、いつでも彼が隣にいてくれたからだろう。 「れ、くん、」 その名を口にしながら。僕は完全に意識を手放した。 『大丈夫だよ、さとちゃん。俺がずっと守ってあげるからね。』 いつか、彼が言った言葉が頭の中で響いた。
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