二章

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「…くん、さ…さとくーん!おーい聞いてる?」 「…あッ、ご、ごめんゆうくん。き、聞いてる!」 「今日はずっと心ここに在らずって感じ。体調優れないようなら保健室行く?俺付き添うよ。」 「うんうん、大丈夫だよ。心配かけてごめんね」 慌てて首を振り未だに一問も解けていない課題に向き合う。既に課題を終えたゆうくんは机の上に肘を着きこちらをじっと見つめていた。 「所でソレ。油性ペンで答え書く気?」 「え、あっ。」 ゆうくんに指摘され初めて自分が油性ペンを握っている事に気がついた。危ない。全然気づかなかった。 「やっぱり今日変だよ、さとくん。体調が問題でないなら他に何かあった?」 そう問われ脳裏を過ったのは昨日の出来事だが、あの話はゆうくんに話すべきではないと判断した。ああいう事態は割と慣れている。モテる幼馴染を持つと結構大変だ。筆箱の中からシャーペンを取り出し改めて問題に向き直るが…全然わからない。びっくりした。本当に少しもわからない。…この範囲本当に授業で習ったかな? 「あ〜この範囲さとくんが居ない時に授業で習ったやつかも。俺で良ければ教えようか?」 「ほ、ほんと?!ありがとう、本当に助かります。」 どうりで。完全に初めましてなら訳がわからなくて当然だ。うんうん頷きながらゆうくんの声に耳を傾ける。 「で、答えがこうなる訳。解った?」 「……わ、わんもあぷりーず」 結局、2度目ましてでも問題の答えは解らなかった。ゆうくんの教え方が上手いのは承知している。これは僕の理解力の問題だ。この後4回ほど根気よく同じ問題の解説をしてくれたゆうくんは最後の問題を解き終え学校から寮へと帰宅する頃には心なしか疲れきった表情を浮かべていた。ゔぅ、出来の悪い教え子で申し訳ないです。元々自分の実力に不釣り合いなこの学校。辛い入学受験をパスできたのは良いが、少しでも気を抜くと直ぐに置いて行かれる。今のところ赤点だけはどうにか回避できているがゆうくんが居なければ確実に幾つかの教科は落としていた事だろう。 「僕一生ゆうくんについて行きます」 「イヤ。そういうのは間に合ってます」 「秒で振られた…」 「まあ、さとくん可愛いし嫁に娶るなら良いかも」 「こ、告白された…ツンデレだ。」 救世主ゆうくんのツンデレも相変わらずだ。部活動生の活気ある声が校内に響いている。普段この時間帯には既に下校してしまっているので何だか新鮮だ。 「谷くん」 「あっ、鈴弥くん」
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