二章

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「えー…ほ、ホンジツは、オヒガラもヨく、、、、、なんて読むんだよこの漢字」 「おいアイツ絶対ネットでググッた例文まんまパクってんだろ、日本語覚えたての外人かよ」 「花園センパイ静かに。マイク、通ってます。」 「そーいう糸ちゅわんの声も響いてんよ。相変わらず、セクシーな声してんね。喘がせてぇ」 「セクハラです、通報しますよ。」 壇上に堂々と佇む生徒はポケットからグシャグシャの紙を取り出すと、大きな瞳をスっと細め独り言のようにそう呟く。その姿はまるで難問に遭遇した名探偵のよう。ぶっきらぼうながらに艶気を含んだ低い声は入学式の日に一度耳にした声だった。白石 伊織先輩。我が校でその名前を知らない生徒はきっと存在しない。キラキラと煌めく金髪に褐色の肌。スラリと伸びた長身。不思議なもので彼の身に付けた指定の体操服がお洒落なハイブランドのものに見える。 「…グシャッ…まぁ、なんだ、、存分に楽しめ、って書いてあるな。じゃあ、そんな感じでよろしく」 元々グシャグシャだった紙をさらに手のひらで握り潰すと白石会長はそのまま壇上を降りた。その間僅か三十秒。生徒会長の挨拶が異例の速さで終了した。挨拶中鳴り止まない黄色い歓声と、放送部の気の抜けた間の手。…なんと言うか、まさにカオスである。
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