二章

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体育祭② 「以上をもちまして、第五十八回桜花高校体育祭、開会式を終了致します。え〜続きまして皆さんお待ちかねの第一種目、ラジオ体操を行います。進行は体育委員の皆さん宜しくお願いしまーす」  順調に式が終わり、いよいよ第一種目のラジオ体操が始まった。準備運動を兼ねた全校生徒参加の種目だ。後ろに並んだ憐くん達は隣の列の男子生徒と何やら楽しそうに談笑している。恐らく同じサッカー部に所属する友人だろう。ゆうくんはもうほぼ物言わぬレフ板と化していた。 「全校生徒の皆さん、「「「キャーーーッ榊センパイッ!」」」…静粛に。これからラジオ体操を始めます、前後左右の生徒と互いに距離を取り「「「榊原くーんッ!!」」」」……越後、変わってくれ。」 「はいはーい」  放送部のアナウンスに従い壇上に上がった生徒は短髪の黒髪に色白の肌、顔だけ見ると美少女に見間違える程の美人さんだった。声を発する度上がる歓声に、眉を顰め呆れたように溜息を吐く。そして最後には壇上の下で待機していた後輩らしき人物にバトンタッチしてしまう。越後と呼ばれたもう一人の生徒は壇上の上から投げて寄越されたマイクを難なくキャッチすると、慣れた様子で代わりに進行を務めた。壇上に立ったままの生徒は表情ひとつ変えず真剣にラジオ体操を終えそのままスタスタと壇上を降りた。その間響く歓声になど一切興味がないといった様子に、まるで高貴な女王様のようだななんて思いながらその背中を見送る。
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