二章

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「あーなんだ、、、元気デスカ?」 「「猪木か」」 「ア?」 朝礼台に佇む姿も十分に眩がったが、距離が近いと威圧感が凄い。学校指定の帽子から溢れた艶のある金髪が風に揺らぎキラキラと煌めく。 時間をかけて彼の口から飛び出した予想外の言葉に勝手に口が開く。慌てて自らの唇を片手で押さえると、真横に居るゆうくんも全く同じ体制だった。会長の視線がゆうくんから僕に移動する。榛色の綺麗な瞳だが、僕を見下ろす視線は鋭い。知らぬ間に足がすくんだ。 「っ元気です。おにい、、、伊織さん」 ゆうくんはそう言いながら、足を一歩前に踏み出し会長に向かって軽く会釈をした。会長の視線が自然と僕から離れる。 「そうか。今度の連休は実家に帰れるのか?」 「…はい、もちろん」 「なら良い。松尾が心配していたぞ。たまには家に帰って、顔を見せてやれ。マア元気そうでなによりだ」 「はい、ありがとうございます」 「…はァ。あと、水分を取った方がいい。お前顔色が最悪だぞ」 無表情のままそう言い残し会長は去って行った。 立ち位置と帽子のせいで良く見えなかったがゆうくんは終始硬い声のまま、会長と接していた。少しの間を空け僕の方を振り返ったゆうくんの顔色は会長が言った通り、先程より更に悪くなっている気がした。 「ゆ、ゆうく、」 「急にごめん。教室行こうか」 「あ、うん」 「ほんと喉乾いたね〜」 にっこりと有無を言わさぬ笑みを向けられ、僕は湧いた疑問をそっと心の中にしまった。今は話したくない理由があるのだろうと察したからだ。いつかゆうくんが話したくなった時に聞こう。 顔立ちは勿論のこと纏う雰囲気まで似ても似つかないうえに学校でこの二人が接触している所を入学して以来一度も見た事がないので、気付きもしなかったが、確かに生徒会長の苗字もゆうくんと同じく〝白石〟だったな。            
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