一章

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「ははっ、良かった〜!この前女子サッカー部の子に告白されたときにね、ここに呼び出されてからいいな〜って思ってたんだ。」 …あぁ、彼は僕を喜ばせるのが上手いのと同じぐらい、僕を悲しくさせるのが上手だという事を忘れていた。 「.......そ、そうなんだ?!あ、でもそのありがとう!」 「ふふっどーいたしまして!じゃあ、座ろ。さとちゃん今日もお弁当?相変わらず料理上手だね。俺も久しぶりにさとちゃんの美味しいご飯食べたいな〜」 僕のお弁当を見ながら笑顔でそう言った。いつも彼は何かと僕を褒めてくれる、いや、その相手は僕だけに限った事ではないけれど。 「はははっ、普通だよ。僕特に料理に凝ってるわけじゃないし」 自分の下手くそな弁当を彼に見られたかと思うと急に恥ずかしくなって、もっと彩りやら見た目を考えて作ってくれば良かったと心底後悔した。茶色ばかりのソレはどこからどう見てもお世辞にも美味しそうには見えない。 「そう?俺はさとちゃんの料理好きだよ?さとちゃんの料理は優しい味がして、心が温まる。きっとさとちゃんが優しくていい子だから、そんな味がするんだね」 横で聞いているだけの僕が恥ずかしくなる程に甘い台詞をスルスルと口にする彼、でも本心から言ってくれているであろうその言葉がいつも僕を救ってくれる。 「へへっ、ありがとう憐くん。」 これもいつものお返し。いつも褒めてくれる彼に僕が言えるのはありがとうと言う言葉だけ。たった五文字に沢山の感謝の気持ちを込めて口にするのだ。 「あ、そう言えばさとちゃん。今度の体育祭何に出るか決めた?」 なるべく彼から弁当の中身が見えないようにご飯を食べながら、お話をする。 「ん〜、、ぼ僕運動苦手だから、あんまり動かない競技がいいなぁ」 「あはは、あんまり動かない種目なんてあるかなぁ?じゃあ〜玉入れとか?球技は、、大変だから。あっ、卓球とか?」 我が校の体育祭は毎年結構な大規模で開催される。内容も充実しており、一大イベントの一つとされていた。因みに毎年体育祭と文化祭の両方が開催される。部活動が活発な為運動部所属の生徒も多く在籍しているので種類豊富な沢山の種目があるんだ。 「うん、玉入れがいいかな。多分ゆうくんも玉入れがいいって言うだろうし」 ゆうくんも勉強は出来ても体育は苦手のようで毎回体育だけは休みたいと不満そうにボヤいている。それでも今の所休みなく皆出席な所が真面目な彼らしい。 「ゆうくんって、さとちゃんがいつも一緒に居る子か〜確かに色白で肌が焼けてなくて綺麗で華奢だし、運動苦手そうだね」 そう言う憐くん言葉にビクッと反応してしまう。彼にとってかわいいとか綺麗は別に特別な言葉ではない。相手を褒める素直な感想として使っているのであってそれに、深い意味はない。分かっている。だが、どうしても反応していまう。醜い嫉妬が胸を焦がす。自分の特別白くもなく、黒くもない中途半端な腕に目をやり直ぐにそこから視線を逸らした。一応コレでも努力はしているのだが元々の肌がこの色なのだろう。中学の頃から日焼け止めやアフターケアに気を遣い初め少しはマシになったのだが、それ以降余り効果は見えない。
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