六話目 「青い紐」

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あの時の夢を振り返ると、女はいつも有名な話を思い出す。 芥川龍之介の『蜘蛛の糸』だ。 地獄に落ちたカンダタが生前、一度だけクモを助けたことを仏様に認められ、天から垂らされた蜘蛛の糸を辿って地獄を抜けようとする。その様子を見た他の罪人達はカンダタに続いて糸を登り始める。大勢の人がぶら下がれば糸が切れると思った彼は、他人を蹴落とし自分だけが助かろうとする。その姿を見た仏は糸を切り、カンダタは再び地獄に落ちた、という話。 あの時、女の妹は、女だけでも助けようと自らを犠牲に女を助けたのでは? 紐を伝ってやってきた他の赤ん坊を貯めるため、共に再びあの世へ戻ったのでは? 女が病気や事故から助かるのも、無事に生まれたのも、お腹の中からら今の今まで、最後の最後まで、女の身を守ろうとしたのではないか? カンダタは己の保身だけを考え地獄に落ちた。 女の妹は姉のことだけを思いいなくなった。 どうか、妹は天国に行って今度は自分のために生きて欲しい。 女は毎年自分の誕生日に、そう願い続けている。
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