六話目 「青い紐」

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 害はない、と言ったが、女には紐以外にもう一つ幼いときから不思議なことがあった。  月に一度は見る、同じ夢だ。  その内容は、真っ暗な場所に女一人だけがいる。夢の中だと、紐は結ばれていない。すると、暗闇の向こうから小さな、生まれたての赤ん坊がこちらにやってくる。 どこか見たことあるような、でも知らない。その赤ん坊に生気はない。青白い顔。女はその赤ん坊と遊ぶ。どうして遊ぶのかは女自身にもわからない。 しかし、突然赤ん坊は息絶える、という夢。  他人が見たら不気味とか怖いと思うかも知れないが、女はなぜか怖さを感じなかった。  その代わり、見るたびに胸に悲哀が広がる。翌朝目覚めても、それはしばらく無くならない。 こんな夢をもう十五年は見ていた。
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