六話目 「青い紐」

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夢も紐と同様に放置していた、そんなある日。 「そういえば、言う機会がなくてね、あなたにずっと言ってなかったことがあるんだけど。」 たまたま、二十歳の誕生日に実家に帰省したとき、世間話の途中、母親がそう切り出した。 「ん?なに?」女は素っ気なく聞き返した。 「そのー、今だから言えることなんだけどね、あなたを生んだとき、実はもう一人いたのよ。」 「え?どういうこと?」 「あなたは、本当は双子だったのよ。」これまで生きていて全く知らなかった自分の話だった。 「じゃあ、その双子はどこにいるの?」女には双子どころか姉妹も兄弟もいなかった。 「先にあなたが生まれて、次にあの子、あなたの妹が生まれるはずだったんだけど……」母は少し間を置いて続けた。 「もう一人は死んじゃってたの。首にへその緒が絡まって……窒息死だって先生が。」 知らない情報が次々と耳に飛び込んできて、思考に時間がかかる。 まさか。自分にそんな過去があったなんて。 女は、複雑な気持ちだった。双子として生を受けるはずだったのに、生きているのは自分一人。しかし、記憶に欠片も残っていない妹がいたのは事実。 女に罪はない。でも、なんだか申し訳ないと、どうしようもない罪悪感がこみ上げていた。 はっと、女は気付いた。 夢の中の赤ん坊、そしてこの右手の黒く細くなった紐の正体。 自分の双子の妹。 昔青っぽかった紐は、へその緒だ。 母親に言われなければ、一生知らずに過ごすとことだった。 無視して生きてきたとはいえ、長年の疑問に終止符が打たれた。 妹と女は今も繋がっていたのだ。
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