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望まれた100番目
「あなたは【100番目】になりました。おめでとうございます」
じっと見詰めた足の爪先から声が生まれた訳ではない。わたしは何が詰まっているのか分からない重たい頭を動かして、目の前に真っ直ぐ立つ男を見上げた。
男の瞳と一瞬目が合う。空っぽの球体に貼り付けた輝きはセロファンのように薄く脆い。それは健全ではない黒と白。
男は感極まったと言うようにわたしの肩を強く掴む。男はもう瞳を合わせない。
それでもわたしを褒めそやす事は止めない。
男の周りを囲むようにずらりと並ぶ老若男女も倣うように皆手を叩く。
「栄誉な事だ」
「あなたは恵まれています」
「ああ、なんと素晴らしい存在でしょう」
【100番目】の存在は、この世界でそれほど貴重なのだろうか。
毎日続く賛辞の言葉。労力を必要としない生活。それが心地良いと思える程にわたしはまだ侵されてはいなかった。
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