隆史の過去

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 隆史は目を閉じて深呼吸をすると、折り畳まれた紙に指を滑り込ませた。そして覚悟を決めるようにゆっくりと瞼を上げると、勢いよく診断結果を見る。 「診断の結果、あなたはDomと判明しました」  他にもいろいろなことが書かれていたが、隆史の目はその一文に釘付けになる。世界が足元から崩れ落ちるような、浮かんでいるのか落ちているのかわからなくなる感覚に見舞われた。  両親はしきりに、背中や腕をさすっている。涙こそ見せないものの、やはり不安を感じているらしい。その表情は険しく、困惑したように顔が顰められていた。  隆史はいわゆる、Switchとはまた違う性質らしい。DNA的にはDomなのだが、それがまだ発現していない状態。これはかなり稀なようで、日本では十人といないらしい。  その日の夜。隆史は夕飯も食べず、自室に引きこもった。布団を頭からかぶり、自分の運命を呪う。  どうして自分が。そんな思いがグルグルと頭から離れない。ただ自分は、普通にSubとして生きていくつもりだったのに。それがどうして、こんなことに……。  これからどう振る舞えばいいのだろうか。いまさら人に命令や支配など、できるはずもない。しかし、長期間パートナーがいないと身体的にも精神的にも不安定な状態になってしまう。  SubにもDomにもなりきれない自分。  診断結果の紙には、いつかわからないがDomのDNAが発現すれば状況は変わるかもしれないともかいてあった。はたして、それはいつになるのか。  一生ついて回る不安が怖くて、隆史は枕を濡らした。
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