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それから隆史は、あえてDomのような行動をして見せるようになった。人を怒鳴りつけてみたり、強い口調で命令してみたり。しかしそれらが虚勢を張っているだけ、というのはすぐにバレる。
ある者は「DomなのにSubと言い張っている」だとか。またある者は「Domの親の細胞を提出した」だとか。いくら説明してみたところで、理解してくれる人などいない。クラスメイト達はとにかく痛々しい目を向けて、隆史のことを影で嗤っていた。
そんな調子だから、パートナーなんて見つかるはずもない。何度か恋に落ち、意を決して告白したものの、みな隆史では満足できないと口を揃えて言う。
支配されている実感がない。試しにコマンドをしてみても、腹の底から震えるような快感がない。ただ優しすぎる。
そんなことを言われ続けていれば、Domとして以前に、人間としての自信がなくなってくる。
それからというもの、隆史はもうDomのような行動を取ることはなくなった。それは落ち着いたからでもなんでもない。ただ、そんなことをしている自分が惨めったらしく感じたのだ。
幸いなことに、Subがいなくても不調は起きていない。それだけが唯一の救いだった。
色々なSubたちに開けられた心の穴を抱えながら、隆史は高校に通い続けた。
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