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そんなことを考えている間にも、時間は刻一刻と過ぎていく。考えが纏まらないまま、隆史は布団の中で一時間半過ごした。もうそろそろ、身支度を始めないといけない。
とりあえず顔だけでも洗おうと、ようやく隆史は布団から起き出した。無意識にテレビをつけると、朝のバラエティ番組が流れ始める。それによれば、今日の天気は曇り時々雨らしかった。
「やっぱ、雨だよな」
雨、それだけで隆史の心はまた沈む。隆史はいわゆる、雨男だった。遠足なんかの楽しい行事から、大事なイベントの際は雨が多い。
寒くて服や鞄は濡れ、足元がグチャグチャだったり電車が遅延したり。晴れていれば、なんて何度思ったことが。つくづく自分は運がない、と隆史は誰とも知らない神を呪う。
「今日もまたジメジメすんのかな。やだなぁ……」
服装の心配をしながら洗面台の前に立つと、無精髭をはやした隆史が鏡の向こうから睨み返していた。寝起きで目が浮腫んでいるのか、かなり目つきは悪い。
試しに隆史は、ニッコリと笑ってみせた。司のように、とまではいかないが、優しく、穏やかに微笑んで見せる。しかし鏡の中の隆史は、まるで犯罪者のような不審な笑みを讃えていた。それに悲しくなり、またバカバカしくなる。サッと笑うことをやめていまうと、蛇口を一気に開けた。
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