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ぬるい水で顔を洗うと、電気カミソリでひげを剃る。終わったあとにまた鏡を見れば、先程よりはまだマシな顔があった。不細工には変わりないが、清潔感はある……、はず。
サッパリした顔で部屋に戻ると、テレビの中では昨日起きた事件についてコメンテーター達が意見を述べていた。それを横目に、隆史は冷蔵庫へと近づく。
「何かあったか?」
扉を開ければ、中身はスカスカ。卵とウインナーが辛うじてあるくらい。いい加減スーパー行かなきゃな。そんなことを考えながら隆史は卵を2つ手にとった。朝食は簡単に、スクランブルエッグとトーストで済ませることにする。
隆史は、外食と自炊と半々だ。料理が出きないわけではないのだが、なんとなく面倒なのだ。一人で作って、一人で食べて、なんてのは寂しい。給料日前は流石に切り詰めるが、基本は外で食べるほうが好きだった。
フライパンでサッと食パンを焼けばキツネ色が食欲をそそる。その後に溶き卵を半熟に焼いて、上からケチャップを存分にかけた。
テーブルに持っていくまでもなく、調理場で立ちながら食べる。サクサクのトーストにスクランブルエッグを挟み、豪快に口を開けた。満足のいく味に、何度か頷く。
トロトロの卵にケチャップの酸味がとても旨い。トーストの焼き具合も、いい塩梅だ。
「ごちそうさん」
ものの数分もすれば、皿は空になる。簡単にそう言って、皿を流しの中に置いた。洗うのは後にしよう。
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