またお会いしたかったんです

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「さて……」  隆史はクローゼットを開けて、今日着る服を探し始める。下はジーンズでもいいが、問題はトップスだ。 「さすがにTシャツはなぁ……」  いくら暑いといえど、他人と出かけるのにはラフすぎる。かと言ってハンガーを調べてみれば、オタクの代名詞という偏見まがいなチェックシャツ。  隆史はあまり、服装にはこだわらない。というより、その体型のせいで好きな服装はできないのだ。だから大きいサイズのある大型店で購入することが多々ある。  自分なりに選んではいるが、あまり好みとは言えない。しかしそれでも、他にないのだから仕方がない。嫌でも着なければいけないのだ。  もともと隆史はお洒落とは無縁だ。なのでここは、黄色と黒のチェックシャツに薄手の灰色のパーカーを着ることにする。至って普通の、いつもどおりの服装。姿見を覗いてみれば、見慣れた自分の格好だった。 「やっぱ、他に服買っとくべきだったかも」  デート、とはいかないまでも今日は特別な日に違いない。そんな日に、いつもと同じというのも少し味気なく感じた。しかしそれ今言っても仕方がない。もう買いに行く時間などないのだから。 「ま、どうせ買ってもな……」  自分がフラれることを前提に、隆史は肩をすくめてみせる。鏡の中の隆史も、それを同意するように冷めた目をしていた。
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