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本棚に追加「そう思ってるのに、今日来たわけ?」
「だって僕から約束したんですよ」
隆史の陰鬱な気まで笑い飛ばすかのように、司は言ってのける。そこには義務感だとか、嘲笑とかは微塵も感じられなかった。それに驚き、これが現実とは思えなくなる。
これは夢なのか? だから俺の都合のいいことばかり起こるのか? ならばこのまま覚めないでいてほしい。
「それに……」
司は、少し照れたように頬を染める。恥ずかしいと右下を向いてしまうのは、癖なのかもしれない。
「またお会いしたかったので」
言葉というのは凶器になりうる。それはもう十分わかっていたつもりだった。しかしこんな可愛い言葉で殴られた経験は、隆史にはない。そんなこと、あるはずがない。
脳震盪を起こしたのではないか。そんなことを思うくらいに、司の言葉に揺さぶられた。
なんだ、自分はもうすぐ死ぬのか。だからこんな人生最大の幸福を味わっているのか?
「あの、杉山さん?」
目を見開いたまま微動だにしなくなった隆史に驚いて、司は隆史の顔の前で手を振ってみせる。それでも瞬き一つしないので、焦ったように頬を軽く叩いてみた。そこでようやく、脳内から意識を引き戻す。
「あ、すんません」
「もう、ビックリしちゃいましたよ」
ホッとしたように司が笑い、それに釣られて隆史も笑う。
あぁ、こんな幸せが欲しかったんだなぁ。腑に落ちたように実感すると、ジワリと目頭が熱くなった。
少しずつでしかできないけれど、司ともっと仲良くなって、あの笑顔のそばにずっといたい。幸せにしたい。そう小さく決意した隆史の心の寂しさは少しだけ小さくなっていた。

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