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 左手にミリタリーナイフ、右手にピストル。それが、オレのスタイルだ。  以前、サムに言われたことがある。ナイフより拳銃の方が、殺しやすいんじゃないの?って。  でも、拳銃だって万能じゃない。特に超接近戦には向かない。機械である以上、故障や不具合だってある。  その点、ナイフは定期的に研ぎさえすれば、故障なんかしない。  なにより、皮膚を貫き、血管を切る感触が好きだ。人を殺していると実感する。  肩甲骨あたりまで伸びた、黄色の髪。シャワーを浴びて濡れた髪を、髪ゴムでひとつにまとめて結び直す。  男のくせに、なんてゴウは言うが、髪を切るよりめんどくさくない。そんなに邪魔にもならないし。  リビングでは、家族のみんなが、思い思いの姿勢でくつろいでいた。  サム、アズ、シグマ、エス、アイル、ユイル、ニック、イヅ。大切な、オレの『家族』たち。  みんなをリビングに集めたのは、オレたちのリーダー、レイ。  そのレイが、リビングに入ってくる。  無表情のまま、みんなの前に立ち、全員を見下ろす。  立っているだけで威圧感を醸し出す男。それがレイだ。 「みんな、よくやった。 当初の予定どおり、しばらくここをアジトにする」  みんなが歓声を上げる。 「やった!ここって、水道があるんだよ!井戸で水くみしなくていいんだ!」  両手を上げて、無邪気に喜ぶユイル。 「しかも、シャワーはお湯が出るんだぜ!最高だよな!」  アイルもガッツポーズで喜ぶ。あいつ、冷たいの苦手だしな。 「頑丈な屋根のある家っていいよな。今までの、廃材を組み合わせて作った小屋と違ってよ、雨漏りもしなさそうだし、ネズミに(かじ)られることもねぇよ」  ゴウも珍しく、傷だらけで強面の顔を緩ませている。 …やっと手に入れた。  ここが、夢にまで見た、オレたちの家。  念願の、オレたちの家。
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