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 喜んでいるみんなを無表情で一瞥し、レイはさらに指示を出す。 「ゴウ、サム、シグマは、死体をバラバラにしろ。 首と手足を切り落とし、バラバラにした部品を玄関の前の道路にでも転がしておけ。そうすれば、近隣住人は、ここには近づかないだろう。あとは野犬やカラスがおおかた死体を始末したところで、残った骨を捨てろ」  笑顔で(うなず)く三人。レイはさらに続ける。 「ニックは金目のものを集めろ。一部は明日、州警察署長のところに持っていき、買収に使え。残りは生活費と、武器の調達に使う」  ひとりだけ、丈の長い、黒のガウンを着た男、ニック。牧師のように、十字架のついたストールを身につけている。黒髪を七三分けにした、細長い顔の男。穏やかな微笑みをたたえながら言う。 「ああ、なるほど。 前の警察署長は、ほかのギャングの抗争に巻き込まれたのか、バラバラ死体で発見されたばかりでしたね。 今の警察署長は、はっきり言って、貧乏くじをひかされただけの傀儡(かいらい)だ。面倒ごとを背負い込むのなんか嫌でしょう。それよりも、大人しく買収を受け入れるでしょうね。 だから、このタイミングで、この家を襲撃したのですね。ここの住人の死体をバラバラにして放置するのも、牽制の意味を込めている、というわけですね。 本当に、あなたは頭がいい」  ニックの褒め言葉にも顔色ひとつ変えず、さらにレイは指示を出す。 「エス、アイル、ユイルは掃除だ。血のついた絨毯は剥がして捨てろ。 イヅナはみんなの武器の点検と修理。それと、今後、必要な武器をピックアップしておけ。 アズはみんなに夕飯の準備を。食事はでき次第、食えるやつから食っておけ」  最後に、レイはオレの方を向き、無表情で指示を出した。 「おまえは見張りだ、セナ。2時間後に交代する」
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