138人が本棚に入れています
本棚に追加
ゴミの隙間から這い出てきた、幼い少年。年は八歳くらいだろうか。ボサボサの黄色い髪には泥がついている。
サイズの合っていない、敗れたTシャツ。裾を折ったズボンは、ウエスト部分が緩く、今にも落ちてしまいそうだ。
皮膚のところどころに見える、火傷の跡。日焼けで皮がむけた肌。
黒い煙が吹き出すゴミ山に、裸足で登る。そして、鋭い日差しに照らされながら、骨と皮しかないような細い腕で、ゴミを漁る。
少年には、家族はいない。
だから夜は、火災と野犬を避け、ゴミの中に穴を掘って隠れ、一人でゴミ袋を抱きしめて眠る。
それが、少年の日常だった。
そんなある日。
少年はゴミの中に、一振りの錆びついたナイフを見つける。
少年はしゃがんで、ナイフの黒い柄を手に取った。その姿勢のまま、ただナイフを見つめていた。錆びついた赤褐色と、その形状の美しさに魅せられたかのように。
最初のコメントを投稿しよう!