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スノーブーツ
「何してんの?」
背後からの声に思わず飛び上がる。
「ぶ、ブーツ乾かしてんだよ」
「フーン」
放課後、窓際のスチーム暖房の上に横倒しに置いたスノーブーツからは緩やかに湯気が立っている。
寝坊した朝、雪道を急いで、ブーツの中に雪が入るのも構わず来た。
匂いを気にして皆が帰った教室で濡れたブーツを乾かしていたわけだ。
「臭わないか?」
後ろから覗き込む▽▽子に気になった事を聞く。我ながらチキンだ。
「何が?」小首を傾げる▽▽子。
「濡れちゃったんだ?」
「流石に濡れたブーツに足突っ込みたくないしさ」
「又降って来たもんね」
窓の外を見やり呟く▽▽子。
「暗くなる前にお前も帰った方がいいぜ」自分の置かれてる状況も顧みず言う俺に微笑みを返して頷く▽▽子。
肩に下げていたマフラーを放り投げてよこす。
「あたしんち近いから」
「返さなくていいからね」
「一応あたしの手編みだぞそれ」
「いやそれは」
言い返す間もなく教室の戸を開けて出ていく▽▽子。
窓の外を見やれば雪雲に覆われて空は灰色。だけど灰色の雲の上は一面の青空なのは見えなくても分かった。
まだブーツは生乾きだろうけど、もう気にならなくなったしマフラーの甘い香りに包まれて帰るか。
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