大成

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 大成は小説家志望だった。幼い頃から読書が好きで将来は「本を書く人」になりたいと当然のように思っていた。そんな大成が小説を書き始めたのは高校時代から。内容は純文学には程遠いものだが大成の描く物語には夢があった。ファンタジーや恋愛小説。飛躍したところでSFのような題材も好みだった。当時は作品が仕上がると読書好きな友人に読ませてはその反応を楽しみにしていた。 「スゴイよタイセー! お前は絶対プロになれるよ!」  そう言って友人達は喜んでくれた。大成もそれが自信となり、漠然と自分の職業として小説家を思い描いていたのだった。そんな大成も既に36歳。友人達は結婚して家庭を築いている。OA機器メーカーに勤める大成は未だに独身。そして小説を書き続けている。作品は長編、短編含め60作以上に及んだ。仕事の傍らそれらをアレンジしては様々なコンテストに応募していた。
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