信じがたい話

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「順を追って説明してくれ」  冷静になろうと肩で大きく息をしてからゆっくりと大成は言った。 「ええ、私が説明するわ。それより質問してよ、疑問に思っていることを」  優輝に目配せしてエリカが代わる。 「どこから来たの? どこに住んでいるの?」 「小説と同じ場所に住んでいる」 「じゃあ証明や記録があるの? 住民票とか、戸籍とか」 「知らないわ。兎野さんが生きているこの世界の裏の世界に私達は住んでいるの。鏡で写したような世界」 「意味が分からない。死後の世界みたいな感じ?」 「う~ん・・・それとは違うと思う。見た感じは同じ世界よ。ただ私達の世界の人間は全員が想像の人物なのよ。誰かが創った人間」 「じゃあ仮面ライダーとか漫画のキャラもいるの?」 「いるんじゃないの? 誰が仮面ライダーか知らないけど。漫画のキャラもいるのだろうけど、普通の格好した人間だから誰がそれなのかは分からないわ」 「それなら映画の登場人物もいるってことだよね? ハリウッド映画のヒーローとかもいるの?」 「アメリカに行けばいるんじゃないの? 外見は必ずしも演じた役者ってわけでは無いの。あくまで創った人がイメージした姿なのよ」  それを聞いて大成は妙に納得した。目の前にいる優輝とエリカは大成のイメージ通りの姿をしていたからだった。 「そもそもどうしてここに来たの?」  大成はこの突拍子もない話を徐々に受入れている自分に気が付いた。 「私達が来たんじゃないの。あなたが私達の世界に入って来たのよ」 「え・・・?」  黙って話を聞いていた優輝がニヤリとして、 「この居酒屋がそうだと気が付きませんか?」  と静かに言った。 「は? ここはいつも俺が寄る居酒屋だよ」  大成は周りをキョロキョロとした。照明器具、テーブル、イス、壁や天井、床。いつもと同じだ。しかし聴き慣れないジャズが流れていた。
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