龍の涙

1/2
前へ
/8ページ
次へ

龍の涙

 かつてこの土地の空の上には、『龍』が住んでいたという。  雨を降らし、(いかずち)を落とすことができた龍は、その力を使い大地を苦しめた。  怒った山の大妖怪たちは、龍の子どもを捕まえると、親が二度とこの地に悪さができぬよう、山の奥深くに封印したという。  愛する我が子を失った龍は、ひどく怒り狂うも、その矛先を大地に向けることはできず、空の上で数百年もの間、嘆き悲しんだ。  そうしていつしか語り継がれるようになったという。  天が雨を降らすのは、我が子を失った龍が泣いているからだと……。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加