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亡くなるまでの彼の人生が、どんな人生だったのか私にはわからない。
私が知っている彼は、ほとんどがメールの中の偽りの姿。
会ったことだって1回しかない。
それでも、あの経験は今でもはっきりと覚えている。
きっとこれから先、何十年経ってもきっと忘れないだろう。
これまで50人以上の男性と関係を持ってきた。
覚えていない人もたくさんいる。
それでもそんな私の経験値を上げるきっかけになったのは、まぎれもなく彼の存在があったから。
今、人生でまた辛い時期にきている。
ふと彼のファンが作ったメモリアルサイトを覗きにいくことがある。
生きていることが辛い。
けれど死ぬこともいやだ。
そんなことを考える時に、彼の存在が私を不思議と支えてくれる。
きっと過去の思い出を美化しているだけなのかもしれない。
そうだとしても、ロストバージンはたった1回きりのこと。
その大切な体験をあんな形で迎えてしまったのは、不本意だったけれど、
それでも私の中の大切な思い出の一つとして残しておこう。
そして密かに、思う。
私がそっちの世界に行った時、もう一度私をみつけてください。
そして1回だけ内緒で、今度こそちゃんと愛しあいましょう。
そっちの世界のロストバージンもあなたと迎えたい・・・。
H(彼の本名)くん、ありがとう。
またね。
END
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