ロストバージン

1/17
207人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ

ロストバージン

ロストバージンしたのは、19歳の冬。 クリスマスも過ぎた年末の寒い日の午後だった。 この日が私の人生を狂わせていくなんて、純粋無垢な当時の私には想像もつかなかったんだ。 相手は、出会い系で知り合った北九州のバンドマン。 年齢は私よりも6つ年上の25歳だった。 関東に住んでいる私と北九州の彼。 お金も行動力もない私にとって、きっと彼に会うことなんてないと思いながら毎日メールのやりとりをしていた。 バンドでボーカルをしていた彼は、ナルシストだった。 写真をお願いすれば、自撮りをしてすぐに送ってくれたし、時には動画を送ってくることもあった。 バンドの新しい曲が出来上がった時は、音源を送ってくれたりもした。 次第に連絡手段はメールと電話になった。 電話をしている時は、3時間以上話していたこともあった。 日々、彼色に染まっていく自分。 友達に彼の話をしても、あまり興味を示してはくれなかった。 それまでも出会い系で知り合った人と連絡を取っていたのを知っていたので、どうせいつものことだろうと興味がなかったようだ。 私も初めはそんな軽い気持ちだった。 しかし、気付けば彼に会いたい欲求と会ってもいない彼を好きになっていた。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!