夜の世界(街)へようこそ

12/12
前へ
/89ページ
次へ
そのあとは修也さんと駅でお別れをして私は適当に街をフラフラと歩いていた。 これで修也さんも一夜限りの人になった。 私はいろんな人と一度だけしたけど数なんて覚えてないし、数える気もない。 数なんてどうでもいいから。 そのあとからはアクセサリー店やブランドショップを見に行った。 結果は何も得られなかったけど楽しかったからそれで満足。 そのとき街を歩いていたときにある芸能人に目がいってしまった。 街の大きな液晶モニターから聞こえた。 『・・・好きって言ったら、どうしますか?』 『───幼馴染みに愛される物語(日々)を。───7月10日 上映』 ピンク色の文字にドアップで映し出された。 そのモニターから聞こえた声は昔の私なら喜んでいた。 でも今は1番聞きたくなかった。 その声は好きだった人。 「っ!?」 カツカツカツ!! 私はすぐさま(きびす)を返して無意識にモニターから逆方向の道を人を切り開いて突き進む。 自然と俯いて早足になるけど自分のなかでは混乱していた。 え?何が起こってるの? なんであの人が? 嫌だ、やめてよ、せっかくいい暮らしをしていたのに邪魔しないで。 お願いだから! だんだんと忘れかけていた記憶が甦る。 またあの人の声が聞こえたからだ。 今でも鮮明に覚えてる。 『・・・好きって言ったら、どうしますか?』 あの人の声が映し出された瞬間息をのんでいた。 自分でもわかる冷や汗をかいた。 カツカツカツ...。 それから私がどうやって帰宅したのか覚えてない。 ......たしか地下鉄に乗って帰宅したはず。 それよりもあの人の声が印象強い。 あの人の声が聞こえても。 いつだってスルーして忘れられたのに。 いつだって受け流して忘れられたのに。 「はぁ、はぁ、・・・。」 ガチャン! 乱暴にドアを閉めて靴を乱雑に脱ぎ捨ててリビングにあがる。 ソファで踞って1人で真っ暗な部屋にいた。 幼馴染みに...。 今度は幼馴染み役なんだね。 私には関係ないし、どうでもいい。 「っ・・・な、んで・・・!」 私の1人だけの泣きそうな声が響いた。 1人で塞ぎ混んでしまう。 もう思い出したくないんだ。 私の嫌な過去で気持ちは最悪。 あの人の声で忘れかけていた過去が頭に過った。 私のビターな(苦々しい)チョコレイト(恋)のお話が映し出された。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加