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第7話 心と体 ※
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「服、返すだけだし…いや、でも、わざわざ行かなくても…」
賢司の服が入った紙袋を見つめながら、俺は立ち止まっては進み、立ち止まっては進み…という怪しい行動を繰り返していた。
大学で渡せばいいんだろうけど、他人の服を公衆の面前で返すとか、なんか、気恥ずかしい。そりゃ親友なんだしそういうのも有りだということは分かってる…けど、無理なものは無理だ。
「…っと…雨?」
立ち止まって盛大なため息をつくと、ポツ、と頬に水が当たった。そして、その勢いはどんどん強まっていき、いつの間にかどしゃ降りに変わってしまった。
「ちょ、まっ、洒落になんない…!」
傘なんて持ってるわけもなく、俺は紙袋を雨から守るように抱えながら、大急ぎで賢司の家を目指した。
「…随分びしょ濡れだな」
「傘持ってなくてさ…」
くしゅっ、とくしゃみをすると、タオルを頭にかけられた。
「とにかく入れよ。シャワーを浴びた方がいい」
「え、いや、でも」
「風邪、引いてほしくないし。服は、前にうちに置いていったやつがあるから平気だろ」
そういえばこの間、自分の服は置き去りにしたままだったな…と考えつつ、俺は促されるまま風呂場に入った。脱衣場で張り付く服をすべて脱ぎ去り、洗濯かごに放り込む。
風呂場に入ると、白い湯気が充満していて、あたたかい空気に包まれた。湯船にたっぷりお湯も入ってる。
「…用意周到…」
「別に晴翔が来るって踏んでたわけじゃないけど」
「…っ?!な、何で入ってくるんだよ?!」
「別に構わないだろ。節電ってことで」
「構う!!ってか、お前、節電とか普段は気にしないだろ!!知ってんだからな!」
「お、晴翔に知っててもらえて嬉しいな」
しれっと自分も風呂場に入ってきて、にこりと微笑みかけられる。何考えてんだこいつは。距離を取ってタイル張りの壁に背を預けると、苦笑されてしまった。
「あんまり警戒されると、逆に襲いたくなるもんだぞ」
「い、嫌だからな…!」
「ほら、早く洗うぞ」
二人で並びながら体やら髪やらを洗うとか、シュールすぎて笑える。しばらく警戒していたけど、本当に何もしなさそうなので、大人しく洗うことに専念することにした。
「先入ってて」
「い、一緒に入る気なのかよ」
「いいだろ?俺も寒いし」
「じゃ、じゃあ、俺はもう出る」
「それはダメだ。体が冷えてるんだからな」
「うぐ…」
ここでごねても仕方ない。
特に何かしてくるわけじゃないし…と思い直し、渋々湯船に浸かることにした。
口元までお湯に浸かりながらぷくぷくと泡を作っていると、賢司が本当に入ってきた。そして、足の間に俺を入れ、後ろから抱きしめるように俺の腰に腕を回した。
肩に賢司の額がつけられ、髪が肌に当たる。
「…っ、…く、くすぐったい」
「…。」
賢司が確かめるように、そっとうなじを撫でる。噛み跡を辿っているらしい。ぞわぞわとした感覚が伝わってきて、肩をすくめてしまう。
「賢司…?」
「…好きだよ、晴翔」
ちゅ、とうなじに口付けられる。
と同時に、腰に違和感が。
「あ、当たって、る」
「まぁ…好きな相手と触れ合えば自然にこうなるよな」
艶を含んだ声音を耳に吹き込まれ、ゾクッとした快感が走る。さらに賢司は俺の昂りを柔く揉んだり擦ったりし始めた。
「っ、さ、触るなよ…っ」
「だいぶこっちは期待してるみたいだけど」
「きた…?! こっ、これからお前のこと変態親父って呼ぶぞ!!」
「はは、それは嫌だな」
「…っ、ひっ、っあ…!」
先端を指でぐりぐりと弄られ、射精感を高められていく。水の中ということもあって、なんだか変な気分になる。
ぎゅっと目をつぶり、快感をやり過ごそうとしたけど、かえって刺激がダイレクトに伝わる結果となった。
そして何回か擦られ、俺はあっけなく精を吐き出すことになった。
脱力してもたれかかると、賢司は首筋や頬に口付けた。そのまま力の入らない俺の顔を指で辿り、優しく唇を重ね合わせる。
「…賢司って、キスするの好きだよな…」
「晴翔とするキスが、好きだ」
困ったように眉尻を下げると、もう一度口付けられた。
「…賢司、俺は」
「晴翔は俺の番だ」
「…」
「他の奴になんて渡さないからな」
うなじをそっと撫でられる。
その顔が苦しそうに見えたのは何故だろう。
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