1-1 灰色の少年

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 面白い、とラウルフも話に乗ってきた。 「そんなら教会の神父は魔女にしちまおうぜ。いつも偉そうに説教やらうんちくやら垂れ流してるからな。きっと魔法だって使えるさ。カボチャの馬車をこしらえたのはアイツだな。」  それから僕らはあれこれと好き勝手なことを言って遊びはじめた。  ケチんぼでちょっとのオマケも許してくれない駄菓子屋のおばあちゃんは意外と騙されやすいから裸の王様。酒屋の店主は顔が広くていろんな話を知っているけど、とっても口が堅いから、穴蔵に向かって王様の耳はロバの耳と叫ぶ家来。いつもラウルフの届けるパンやお菓子を待っている子供たちは、ちょっと贔屓目で可愛らしいティンカーベルや七人の小人にした。  小高い丘に建つ家に住む寝たきりのおじいさんは、なんでも知ってる生き字引なので賢者マーリン。塔の見張り番は厳めしい服と顔をしているからトランプの兵隊。郵便配達の青年は、きっとラブレターも届けたことがあるから恋のキューピッド。大飯食らいの小間物屋さんは、ゾウを丸のみにしたウワバミがぴったりだ。 「だんだんそのままになってきたな。」 「そうだね。でも可笑しい。」  町中の人が素っ頓狂な格好でダンスパーティをしたらどんなに面白いだろう。きっと普段の諍いや軋轢を忘れてみんな仲良しになるに違いない。 「そしたら――」  ラウルフは何かを言いかけて、 「ほら、着いたぞ。」  だけど言わずに、そう告げた。
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