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第1話 誘われて
「夏芽、起きて」
川の桜が朝日を浴びて美しく咲きほこる、4月10日。
私――真雪春花は、すぐそばのベッドで寝ている妹の夏芽に声をかけて起こす。
「夏芽、夏芽ったら。今日は入学式でしょ、そろそろ起きないと」
「ふぇ? あ、春花」
あどけなく笑う夏芽と目が合う。
「って、入学式なんだっけ!?」
やっと目が覚めたらしい。飛び起きたかと思えば、着替え始めた。
「春花、朝ごはん、食べた?」
「ごめん、夏芽。勝手に先に食べちゃった。夏芽のはちゃんととってあr」
「――春花のいじわる」
振り向けば、あっかんべーされた。
したいのはこっちだって同じだ。
「しょうがないじゃない、あたしだってこれからバイトなんだから」
じゃあね、とだけ言って、私は足早に自宅を出て、自転車の前カゴにリュックを入れて走る。リュックの中身は、バイト先の制服と、筆記用具。それから、提出書類が入ったファイルも。
春は出会いもあるけど、提出する書類も多くて大変だ。
夏芽の入学式が上手くいくことを祈りながら、私は目の前の信号が青になるのを待つ。
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