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私と妹・ナツメの共有部屋に、荷物を置いて、脱いだコートをハンガーに掛けてクローゼットに仕舞ってから、私は部屋を出てリビングに向かった。リビングに到着する頃には、ほのかにウッディーな香りがしたので、今日はルイボスティーなんだなとわかる。
赤いソファーに腰掛け、早速ルイボスティーを頂く。
ナツメよ・・・・・・・、日頃バイト先で疲れて擦り切れた心と、痛みきった胃を優しく労ろうと、胃に優しいルイボスティーを選んでくれたこと、感謝するよ。
ルイボスティーの優しい温もりが、胃をじんわりとあたためてくれる感じがする。
「・・・・・・美味しい」
「ほんとに!? 良かった」
二茶服してから、私はルイボスティーが入ったマグカップをローテーブルに置いた。
「それで? 話って、何?」
ナツメは自身もハーブティーをニ茶服してから、私のより小ぶりなマグカップを置くと、すっと、まっすぐな視線をこちらに向けてきた。
「お姉ちゃん、」
ナツメが私を名前でなく、「お姉ちゃん」と呼ぶときは、だいたい真剣に何かについて話したいときだ。
「何よ、改まっちゃって」
ナツメは、口をきゅっと結び、少し興奮気味に頬を赤らめた。それは、何かを決意でもするように。
「お姉ちゃん、あたしと一緒に、音楽活動・・・・・・しない?」
「音楽活動?」
いや、いやいやいや。いきなり何を言い出すんだ。
第一、楽器のひとつも持ってないのに。
それにーー
「私もナツメも、部活ですら楽器の経験もないのに、いきなり何を言い出すのよ。それに、私はもう26よ? 人生がもう既に定まって・・・」
「ーー音楽に年齢なんて関係ないじゃん! 経験なんてこれから積めばいいのよ!」
わからないな・・・・・・。
「何で私と音楽を始めたいの? やるんなら、ナツメはまだ学生なんだから、これから部活に入れば良いじゃない」
それまでテーブルを思い切り叩いてむんずと身を乗り出して私に迫っていたナツメが、しゅん、としょげた表情になり、私から少し離れた。
「だって、私とお姉ちゃん、今まで一度だって一緒に何かをしたことあった?」
「ないわね。こんなに仲良しなのに、確かに、一緒に共同で何か成し遂げたことがあるかといえば、ないわね」
「でしょ!?」
「私と音楽をやりたい理由は、私と共同で何かやりたいと思ったことがキッカケなわけね」
ナツメは深く頷いた。
「じゃあ、何故に音楽なの?」
「それは・・・・・・」
ナツメは部屋から、白いノートパソコンを持って戻ってくると、動画サイトの画面を私に見せてくれた。
それで私はナツメがやりたいこととその理由を察した。
「なるほどね。要は、私と共同で何かするなら今流行りの動画投稿を始めたい。でも、ただ「やってみた」系を上げるだけではすぐに埋もれて失敗に終わる。どうせなら一番になりたい。一番に近づけそうなジャンルはないだろうか。演奏動画はどうだろう。練習して、上手くなって、背景にもこだわって、しかも姉妹での演奏動画ってなかなかない。これは他にない演奏動画になる。一番に近づくことができるかもしれない。確実だ。ーーこう思ったのね?」
「よ・・・・・・、読まれてる!あたしの思考、完全に読まれてる」
「あんたはただ提案して、理由を簡潔に言って、動画サイトの画面見せただけで、これから説明しようって、思ってたのかもしれないけど、ごめん、動画サイトの画面見せられた瞬間わかっちゃったもんでね。何だろ、直感てやつ?」
「凄すぎでしょ」
「で、私を巻き込んでトップに行きたい。そのためには先ず、私に提案をして、一緒にやってくれるよう説得しなきゃ、ってとこかしら?」
「はい」
「良いわよ。面白そうだし、その提案、私も乗っかるわ」
「ほんと!? じゃあ・・・・・・」
「えぇ。一緒に音楽活動、しましょう」
「ありがとーーー!! お姉ちゃん大好き!真雪春花、最高!!」
ナツメがハグしてきたので、優しく背中を撫でてやった。
「あはは、もう、ナツメったら」
この後、私たちは夕食後に、部屋で、中古で楽器を売ってる店を探し、買いに行く日と、練習日程を決めた。
ちなみに、話し合いやネットでデュエットする楽器の組み合わせについて色々調べた結果、トロンボーンとクラリネットの組み合わせがレアだということがわかった。
ので、私はクラリネット、ナツメはトロンボーンに決定した。
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