すごい美容液

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 とある住宅街に若い夫婦が越してきた。その奥さんは美人で、性格も明るく気立てがよかった。町内会や地域の催しにも進んで参加し、いつも楽しそうに笑っていた。その地域では中高年の住民が多かったこともあり、奥さんはすぐに話題の人となった。 「あの奥さん、いいわよね」 「綺麗だし、気も利くのよね」  井戸端会議ではそんな話もよく聞かれるくらい、男女問わず好かれていた。  しかし、彼女を快く思っていない者もいた。それは夫婦の向かいの家に住む女だ。女はもうすっかり中年の域に入っている年齢であったが、若い頃は美人と褒めそやされたものだった。あの奥さんと同じように、町内会に出ればあちこちで呼び声がかかり、イベントがあれば注目の的だった。 「あんなの、ちょっと若いだけじゃない」  向かいの家を眺めながら、女はそっとつぶやいた。夫は帰りが遅く、女には見向きもしない。近所の人たちも単なる近所付き合いの一環としてゴミ捨てや買い物帰りに軽く挨拶するだけ。そんな生活に嫌気がさしていた。
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