【2】

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素敵なワンナイトラブで、樹里は忘れられなかった。 清史に会いたいなぁなんて思いながら、仕事をしているとまたしても売春婦の死体が出たということで、現場へと向かった。 この日は、またしても雨が降っていた。 いくらか真新しい死体に慣れてきたものの、相変わらず損傷が酷くて、蛆虫や蠅がいる死体には慣れなくて嘔吐をしていた。 鑑識の小竹文昭(こたけふみあき)が「クソっ!!精液さえ出てくりゃあ、犯人の特定に繋がるっつーのに出てきやしねぇ…」と言い、苛立っていた。 あれから道隆と警察署ですれ違っても、シカトをするようになっていた。 それでも道隆はアパートの前でタバコを吸ったり、待ち伏せをするようになっていて、上司でもある中藤芳和(なかふじよしかず)に相談をすると「注意をしておくよ」と言われたが、一向に解決する気配がなかった。 聡子が何度も注意をしてきたけれど、全く聞く耳を持たなくてピリピリしていた。 そんなこんなで疲れたまま、銭湯へと入ってコーヒー牛乳かフルーツ牛乳を飲んでストレス発散をしていた。 銭湯から出ると「あれ?樹里ちゃん‥ですか?」と清史の声がし、樹里はドキッとしながら振り向くと、清史が立っていた。 「えっ…?清史さん、何でいるンですか?」と言い、清史をまじまじと見ていると「あのときはまだ車でここまで来ていだのですが、お恥ずかしい話居眠り運転をしてしまい、入院をしていて、そのときに車をオジャンにしてしまいまして…それと、もう一度樹里ちゃんに会えたらいいなと思いました…」と言い、清史が照れ笑いをした。 その笑顔にドキドキしながら「そうだったンですね!あっ…清史さんが良ければ、住む所が見つかるまで私の家へどうぞ!!」と言い、樹里は顔を真っ赤にして自身の住んでいるアパートを指差した。 「えっ?いいンですか?!」と言い、清史が驚いた顔をしていると「もちろんです♪それに、私も清史さんに会いたいと思っていました」と言い、俯いた。 すると「ありがとうございます!どうせなら、一緒に住みませんか?自分、あれから樹里ちゃんのことが忘れられなくて…樹里ちゃんのことが好きです。お付き合いをしていただけませんか?」と言い、清史は真剣な眼差しをして樹里を見つめた。 樹里は胸が苦しくなり「私も、清史さんのことが好きです…実は今、この間話をした男性に付きまとわれていて困っていたンです」と言い、ポロポロと涙を流した。 清史は優しく抱き締めながら「良かった…そんなことがあっただなんて、ゴメンね?」と言い、樹里の頭を優しく撫でた。 樹里は(せき)を切ったように、号泣をした。 一週間後、清史が引っ越してきた。 家賃・光熱費・水道代は清史が支払うと言ってくれた。 最初は断っていたが、それでも清史は払うと言ってくれたため、お言葉に甘えて支払ってもらうことにした。 引っ越しのときには、泰蔵と聡子も手伝いをしてくれた。 いつの間にか、泰蔵と聡子はお付き合いをしていて樹里は驚いた。 家具も清史が一人暮らしをしていたのがあり、さすがに壊れたラジオやちゃぶ台などはみっともないし恥ずかしいから捨てなさいと聡子に言われ、泣く泣く捨てた。 泰蔵と聡子が帰っていき、樹里は清史の肩に頭をのせると「どうかなさいましたか?」と言い、優しく微笑んだ。 樹里は「何か、不思議な縁だなぁ…って思ったンです。清史さん、ありがとうございます」と言い、清史をチラッと見ると「確かにね。それはこちらのセリフです。ありがとうございます」と言い、清史は樹里の頬を撫でて顎を持ち上げるとそっとキスをした。
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