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道隆が家に帰ってくると、電話が鳴った。 その音にビクッとしながら恐る恐る受話器を取ると「よぉ♪元気か?」と同僚の山浦春人(やまうらはると)だった。 春人は警察学校で一緒になった同期で、いつも一緒にキャバレーとかへ行っていた。 「何やー!お前かぃ!」と言い、道隆の顔が穏やかになった。 すると「明後日から冬休みやし関西にでも旅行がてら、ちょんの間行こけ?」と春人が誘ってきた。 これと言って用事もなかったし、新しく出来た彼女も補導をした高校生ということもあり、お正月は家族と過ごすと言われていたため「ええね♪最近、エスをしながらパツイチしてへんからしてぇと思ってたトコなんやわ‥」などと、二人は下世話な話で盛り上がっていると、玄関のドアを叩く音がした。 シカトをしていたがあまりにもしつこいため、春人と簡単な旅行の打ち合わせをして電話を切ってから玄関へ行くと「すみませんね?なので…」と言い、配達員の男性は小さな発泡スチロールの箱を渡して、伝票に道隆のサインをもらったのを確認をすると去っていった。 道隆は差出人を見ると、奥さんの実家付近の住所に見知らぬ女性の名前だった。 もしかしたら今まで助けてきた被害者の誰かがお礼の品を送ってきたのかと思い、鼻歌混じりに開けると、そこにはホルマリンが入った瓶の中に薬指に指輪がしてあり、その指輪を見てスグに自身の奥さんの指だと気が付き、思わず「うわぁあっ!!」と言うと、道隆は瓶を放り投げた。 奥さんがいなくなってから三日後に奥さんを誘拐したという電話があり、電話の後ろからは女性の叫び声が聞こえた。 解放して欲しかったら、二度と他の女に手を出すなと言われていたが単なるイタズラだと思い、康之とキャバレーへ行ったりストリップ劇場や観光地へ行っては出張コンパニオンとセックスばかりしていた。 いつものように旅行から帰ってくると、電話が鳴って受話器を取ると「約束破ったな?」と言われ、次の日には封筒が送られてきて中身を確認したら、無理矢理剥がされたのか血と肉片がついていた全部の手の指の爪が入っていた。 そして樹里を犯そうとした日には「このことを警察に言ったら、お前のカミさんを殺す」と言われ、その間も女性の叫び声が聞こえていて、よく聞けばその声は奥さんだと気付き、道隆はビクビクしながら過ごしていた。 そんな恐怖からお酒を飲んで紛らわしていて、仕事にも二日酔いのまま来ていた。 久々に春人からのお誘いも断ろうとしたが、さすがにお正月中にはそんな(むご)いことをしないだろうと思い、春人のお誘いをOKした。 道隆は、この旅行を楽しみにしながら仕事を頑張った。
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