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この日は仕事が休みで、聡子と一緒にお買い物をしていた。 樹里と聡子はいわゆるお嬢様家系で、親に仕送りをしてもらったりしていたため、この日はフルーツパーラーでフルーツプリン・ア・ラ・モードとフルーツサンドを食べながら、道隆の愚痴を話していた。 「道隆だからMなのかもね!」と笑いながら聡子がフルーツサンドを頬張ると「言われてみれば確かに!」と樹里も笑っていた。 聡子は見た目が長身で美人だが、炊事・掃除・洗濯が全く出来なくて、思ったことをズバズバ言ったり男勝りで恋人が中々出来なかったが本人は自由奔放な性格なため、あまり気にしていなかった。 一方樹里は見た目は前髪をオデコを眉毛よりかなり短くしていて髪型はゴムで後ろに束ね、背も低くて童顔で野暮ったい印象で、牛乳瓶の底のようなメガネをしていて田舎者っぽい印象だが都内出身。 聡子とは真逆の性格で炊事・掃除・洗濯が得意で、たまに汚部屋化した聡子の部屋を掃除しに行ったり料理を作りに行ったり洗濯をしたりなどしているが、本人は好きでしているのであって苦ではなかった。 性格はややそそっかしくて天然ボケで、困っている人を放っておけない優しい性格。 樹里は超がつくほど箱入り娘で、一人暮らしをしたいと言うと母親からは猛反対をされ、自由を求めたくて一人暮らしをし、母親には絶縁を言い渡されていたが父親からは仕送りや各家電や家賃も支払ってもらっていたが、樹里は仕送りと家賃のお金を貯金していて、ゆくゆくは父親に恩返しをしようと思っていた。 一見、真逆の性格の二人だから相性が合わないと思われがちだが、聡子が都内にある警察学校へ行くために上京をしてきたときに迷子になっていたところを、樹里が声を掛けてくれたのがキッカケで仲良くなり、親友となった。 この日も学生運動で交通規制があったため、聡子とタクシーで帰ることにした。 「いやぁー…学生には参りますなぁ」とタクシーの運転手が言うと、聡子も「本当よね〜!ったく…たーけぇなことしよるでなぁ!」と談笑をしていた。 樹里は何となく学生運動をしている学生の気持ちがわかるなぁと思いながら、ぼんやりと窓から見える景色を眺めていた。 タクシーを降りて、二人は別れた。 樹里の住んでいるアパートはお風呂はなくて、近くに銭湯や商店街があった。 言葉は悪いが、庶民的な生活をしてみたいと思っていたのもあって一人暮らしがしたかった。 都内も裏を行けば商店街や銭湯などがあったりして、樹里はこの風景がたまらなく好きだった。 テレビも商店街にある電気屋で見ていると、思わず父親に話したらテレビを買ってくれたため仕方なくたまに見ていたが、ラジオばかり聞いていた。 ラジオはゴミ捨て場に捨ててあったラジオを、電気屋に修理をしてもらっていたのを聞いていた。 アパートは二階建てで、部屋は一階の角部屋で和室だった。 鍵で開け、買い物をしたのをタンスに仕舞うとラジオをつけた。 ラジオは真実を伝えているような気がして、テレビよりも好きだった。 あまり物欲というのがなく、たまに近所をお散歩をしていて捨てられていてまだまだ使えそうな家電やちゃぶ台などを拾ってきては、自分で直せるところは直したりしていて、お嬢様らしからぬ行動をしていた。 この部屋にあるものの大半は、そのゴミ捨て場から拾ってきたものだった。 ちなみに通勤で使っている自転車もゴミ捨て場から拾ってきて、自転車屋で修理をしてもらったものである。 着ている洋服も、学生の頃に着ていた洋服をリメイクをして新たに洋服を作ったり、母が編んでくれたセーターを解いてマフラーを編んだりと、手先がかなり器用だった。 お昼ご飯もお弁当を手作りしていて、商店街のお店から格安で手に入れたものを詰めていた。 それらを持ったり着て出勤したときに、道隆が「凄いね」と声を掛けてくれたのがキッカケで、お付き合いをするようになった。 しかし「カミさんがお金を管理しているから、お金がない」と道隆に言われては、たまにお金を貸していて、聡子にも「絶対に騙されているから別れた方がいい」と言われていたが、別れようにも道隆に暴力を振るわれるため中々別れることが出来なかった。 また泰蔵にも付け狙われていたこともあり、一度引っ越しをして、今住んでいるアパートを父親と聡子と道隆にしか教えていなかった。
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