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学生運動がさらに盛り上がり、樹里は内心「いいぞー!もっとやれー!」と思いながら自転車で通勤をしていた。
出勤をして早々また男女の死体が上がったと言われ、行きたくなかったが急いで着替えると現場に向かった。
この日は雨が降っていなかったため、あの連日の売春婦殺人事件とは違う気がしていたが、それでも段々と気持ち悪くなってきていつものように電柱で吐いた。
警察署へと戻るや否や駆け足で給湯室へと向かい、コップにお水を入れると口を濯いでから一気にお水を飲んでいると「大丈夫か?」と道隆が声を掛けてきた。
「あっ…ハイ!大丈夫です!」と樹里が笑顔で返事をすると、道隆は樹里の腰に手を回すとキスをした。
「んっんん‥!」と言い、樹里が驚いた顔をすると「今日から三日間、泊まらせて?」と言い、道隆はニッコリ微笑んだ。
平日なのに、珍しいなぁと思っていると「明日から、カミさんがいないンだよ♪」と言い、ウィンクをして去っていった。
一気に憂鬱となり、大きな溜め息を吐いた。
チャイムが鳴り、それぞれ皆お昼を食べに行ったり出前を取っていたり、いつになく賑やかだった。
樹里はカバンからお弁当箱を取り出し食べていると、あの売春婦殺人事件について刑事たちが話をしていた。
「ありゃあ、かなり女に恨みがあるよなぁ…」
「かなり怨恨があるのかも?にしては、酷すぎる」などという会話が聞こえ、ドキドキした。
食べ終え、樹里は歯を磨きにトイレへと向かうと「朝倉くん…こんな所でダメだって…」と言う声が資料室から聞こえたからコッソリ見ると、道隆と先輩の女性警察官がキスを何度もしながら、胸を揉んでいた。
樹里はその一部始終を見たあと、軽く咳払いをすると慌てて女性警察官が走って資料室から出てきた。
道隆が「なっ何だよ〜いたンだ?」と言い、ぎこちない笑顔をすると「悪いけれど父が来るから、あの人に泊めさせていただいたらいかがでしょうか?」と言い、ニッコリ微笑むと「お前の作った飯が食いたいンだよ!頼むよ〜?」と言われたが今までのこともあり、何となく受け付けられなくなり「とにかく今日は無理ですので、お断りします」と言い、樹里はお辞儀をしてトイレへと向かった。
この日から樹里は、道隆を避けるようになった。
道隆はそんな樹里のことを考えずに、相変わらずモーテルに誘ったり家にも押しかけてくるようになっていた。
あまりにもしつこかったため、聡子にも相談をすると「奥さんもいるのに、何やってンだかねぇ…」と言い、二人で大きな溜め息を吐いた。
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