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この日はお休みで、泰蔵にしつこく映画に誘われていて仕方なしに泰蔵と映画を観に行ってきた。 映画を見終え、歩きながら映画の話をしていた。 何となく映画の話をしている泰蔵はイキイキとした表情で、樹里も楽しく会話をしていた。 レストランでお食事をしているときも、とてもお上品に食べていて驚いていると「んっ?どした?」と言い、泰蔵はニコニコと微笑んだ。 「あっ…いや…その…」と言い、樹里は顔を赤らめながら俯くと「砂川ってメガネを外したら可愛いのに、何でそんな髪型にゃあすか?」と泰蔵は樹里の顔を覗き込んだ。 泰蔵は身長も186cmと高くてガタイも良く、いつもふわふわした雰囲気で女性警察官たちからは人気があった。 25歳と樹里と同い年なのに、お金も支払ってくれた。 あっという間に帰る時間となり、タクシー乗り場で待っていると「奥山さん、今日はありがとうございました。意外な一面が垣間見えて、驚きました」と言い、樹里が笑顔で言うと「んっ?そぉ?」と言いながら、泰蔵は驚いた顔をしタバコを咥えると優しく微笑んだ。 樹里が「正直、奥山さんのことを誤解していたみたい…ゴメンなさい!」と言い、謝罪をすると「んー?あっあぁ…俺もしつこかったし、どうも人との距離感が苦手だでな。俺も怖い思いをさせて、ゴメンにゃ?」と言うと、泰蔵は顔を赤らめながら俯いた。 泰蔵は、愛知県出身で柔道の大会で優勝をしていて大学在学中に警察官にスカウトをされ、上京をしてきた。 母親はすでに亡くなっていて、父親と妹の三人家族だった。 タクシーがやってきて、先に樹里を乗せてタクシー代を渡そうとすると「ええよ。今日はありがとう。またね♪」と言い、笑顔で手を振った。 樹里は泰蔵のことが気になっていった。 それからは普通に会話をしていて、聡子が驚いた顔をしていたが思いの外楽しくて良い人だとコッソリ言うと、聡子も普通に会話をするようになった。 あの日以降付きまとうようなことは一切しなくなり、樹里も安心して信頼をしていた。 泰蔵がいるところは機動隊で、まさに学生運動の真っ只中で生傷が絶えなかったが、それでも学生たちに対して恨み節を一切言うことはなかったり、朝プランターに咲いている花にお水をあげたりしていたため、樹里は本当に心が優しいンだと思っていた。
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