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20歳になった日、祖父はビールを持って部屋に入って来た。
成人の祝いだと2人で酒を酌み交わす。
いつも寡黙で強面な祖父がその日は少し嬉しそうだった。
大学の話を少しした後、胸元から徐ろに2冊の通帳を取り出した。
「春日。これが、お前が引き継いだ保険金と、今迄働いた賃金だ。今年一杯で工場は閉める。今日で一人前の大人だ。これからは、ここを出て、自分の力で暮らしていけ」
一冊は、両親が俺の名義で将来の為に積み立ててくれていたお金と保険金が入っており、もう一冊には、今まで工場を手伝っていた期間の給料が入っていた。
「なんで?俺、工場継いで、ここに居るよ?このお金で新しい機械買って良いよ」
俺は、これからも祖父と暮らしていくつもりだったし、工場を閉めることにも納得がずに食い下がった。
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