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リラ冷えの夜
俺はすっかり〔ameno〕のファンになっていた。
いこごちが良いのは勿論だが、食の好みが俺に合う。
コーヒーは豆の甘みを引き出すネルドリップだし、俺の好きなハード系のパンで作ったオープンサンドはどれも美味い。
自家製のピクルスも酸っぱすぎず食べ飽きなくて、今度はセロリで作ってくれないかとリクエストしてしまったくらいだ。
スティックサラダのディップも特製で、とても美味い。
残すのが勿体なくて、パンにつけて残らず食べてしまう。
残業で遅い日は、作るのが面倒でつい寄ってしまうし、休日も美味いコーヒーが飲みたくて本屋の帰りに自然と足を運ぶ。
マスターの低い声と穏やかな話し方が好きだ。
普段は他人との間に壁を作ってしまいがちだが、彼と話していると心がほぐされて行くような気がする。
若いのに、さりげない気遣いが出来て、温かみのある人だ。
基本的に他人を信じる事が出来ずにいる臆病な俺とは大違いだ。
しかし、ふとした時に思い出すのは、樹の事。
切ない想いには蓋をして忘れようと思ったが、携帯電話に残る優しい声は、未だ、消せないままだった……
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