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「だから、小さい頃は両親とシンガポールにはよく行ってた。大きく成ってからは、興味がある国には色々行ったけど、イタリアが僕には合うみたい。タイも良かったな」
「ふぅーん。シンガポールやタイなら、ウチの営業所があるな」
「そうなの?ところでナナさんってどんな会社に勤めてるの?」
「あれ?言ってなかったか。米に関する色んなモノを扱う会社。精米機とか、農業機械とか米そのものも。東南アジアを中心に世界中に営業所があって、シェアは6割以上かな?」
「スゴイ!大企業なんだね」
「そうだけど、そうでもないよ。俺は事務屋だし」
こうやって、お互いの事を少しづつ知っていく作業がとても楽しい。
今まで、他人とは距離を置いて来たし、他人を知りたいと思った事がない。
しかし、アキの事は、これからもっと深く知って行けたらと思う。
ん? なんで知りたいなんて思うんだ?
微かな疑問に明確な答えが出せず、そのまま宿題にして、仕舞い込んだ。
その後はアーケード街でショッピングをしながら、家に帰った。
その日は、始終柔らかなもので心を包まれているかの様な心地良さだった。
俺は、暫く遠退いていた穏やかな気持ちを思い出していた。
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