雨の〔ameno〕

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俺は、何かから解き放たれたような心地で、アキの亜麻色の瞳を見つめていた。 誰かに必要とされる事がこんなに暖かいものか。 愛情を注がれるという事はこんなに心を揺さぶるものか。 今まで硬く凍り付いていたものが、じわじわと溶け出し、瞳を伝って溢れ出してくる。 この先、誰かと人生を歩むという事を考えない様にしていた。いや、むしろ諦めていた。 何処か他人を信用出来ない性と、過去の恋愛の失敗が、おそらくそう思わせていた。 アキとの生活は穏やかで、陽だまりのような毎日。 こんな日々が続けば良いとは思ったけれど、その片隅で、いつかは終わるものと諦めていた。 数刻前には、アキに影る女性の存在に絶望していたというのに、今はこんなにも幸せを感じる。 ここの神様は悪戯好きらしい。 冷えた体を温める為、お風呂に浸かって寝る事にした。
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